働きマン 2 (2)
安野 モヨコ / 講談社
為になる度:★★★★★
満足度:★★★★★
総合評価:★★★★★
----一巻に比べて、視野が格段にグローバルになっている
もはやテーマは”働く女性”ではなく”現代社会”になりつつある。----
”逃げまどう人々、命がけで助ける人々、
テレビでも観るかのような顔で携帯のシャッターを押し続ける人”
『伝えたいのは何だ?
あおられただけで後続車に殺意を抱く運転手
自分だけが前に進めればいいとルールを無視するドライバー
そして生死の境を「写す」ことでしか認識できない人々
今の世の中はだいぶ狂ってきている
本当はみんなそう感じている。だけどどうしていいかわからない。何もできない。
それがこの一枚の写真に込められているんだ』
紹介文
『働きマン』安野モヨコ主人公は、雑誌編集部でバリバリ働く松方弘子(28歳)。締め切りに前になると、『男スイッチ』が入り、食事、睡眠、恋人..etc仕事以外のことが全て目には入らなくなり働きまくる『働きマン』となる。
講談社発行「週刊モーニング」に月1回連載中の作品です。
紹介文(シュガシュガルーン大辞典より)
週刊誌の編集者である松方弘子。彼女を中心として、恋人や同僚、上司との関わり合いを仕事を通して描かれてゆく。時には協力し、時にはぶつかりながらも相手を理解し、そしてもがき苦しみながらも仕事を成し遂げるのは「働く事が好きだから」。さまざまな「働きマン」たちの奮闘ぶりを描いたこの物語は、全ての仕事をする人々へのビタミンとなるような、爽快な読後感がある。
作者紹介 『安野モヨ』
1971年3月26日生まれ。漫画家の小島功の姪。高校卒業と同時に、講談社「別冊フレンド ジュリエット」にてデビュー 。岡崎京子のアシスタント時代を経て、『TRUMPS!』を開始。『ハッピー・マニア』において名実共にブレイク、テレビドラマ化もされた。
2002年、『新世紀エヴァンゲリオン』『キューティーハニー』でおなじみの庵野秀明と結婚。エッセイマンガ『監督不行届』にその日常が綴られている。
【加藤レンジャーの一言】
最近読んだ別の本で、ある人が言っていた。
『自己と戦いを始めた者は、自分が価値ある人間だと証明したことになる』
(英国の詩人、フラウニング)
「働きマン」に出てくる人々は、全員、自分と戦っている。
最終的に、戦うべき相手は自分なのだ。
それは全て、自己啓発の手本となる姿勢であり、
ここに出てくる人の全てが、私の目指す『先輩』に位置する。
【加藤レンジャーのレビュー】
待望の二巻登場!やはりモヨコ先生は期待を裏切らなかった!!むしろ私は一巻よりも二巻のほうが数倍好きだ。もう少し掘り下げて言うなら、
vol.8の『今も昔も働きマン』の回が大ッ好きだ。正直、上の総合評価★五つはこのvol.8に対して付けたと言っても過言ではない。特にこの漫画に興味がない人も、この話だけは読んで欲しい。というか是非!読んで下さい!!(お願い)それだけの価値が、このvol.8にはあると断言しても良い。
今回も、一巻同様、様々な価値観を持った人たちが出てくる。その人達の考え方にはその人達なりの筋があり、善悪も、周囲が断定するべき事柄ではない。それはまるで生きている一人間のように、天才・安野モヨコは描ききっている。
今回のレビューは、その中のvol.8.9.10を取り上げたいと思う。
vol.8 今も昔も働きマン
vol.8については、素晴らしいので、読んで欲しい!!
この回に関しては、あえて語らない。仕事に対する価値観だとかも通り越して、この回では社会問題を描いている。
私はこの回をただ、
読んだのではない。読まれた。読まされた。
vol.9 根に持ちマン
全巻の複線が生きてくる回。
一巻で松方が暴言を吐いた相手、堂島の話。前回松方が言った「自分が仕事できないのを他人のせいにしてるからダメなんだよ!!」これは、まさしくその通り。しかし、重点を置くべき所は、
”松方に人を批判する権利はなかった”ということ。
「自分が放った言葉」で、一人の人が我を失うほどに怒った。それが問題なのだ。
vol.10 報われマン
私が思うに、最近の「がんばらない主義」というのはここから始まるのではないか?・・・というか私が以前そうであったからこう思うだけなのだが。
この回の主人公の千葉さんはこういっている。
”一生懸命やって裏切られるのは嫌だ。裏切られて相手を憎むのも嫌だ。
思い入れがあるならがんばるな。フラットに円滑に進めるには、それが一番良い方法”
《自己の経験とリンクさせて考える》
私も以前は、出来るだけフラットに、フラットに生きていきたい人間だったから、全くがんばらなかった。というかがんばること自体面倒くさく、それがどういう意味を成しているのかが解らなかった。ある切っ掛けで頑張るようになったのだが、それはまた別の話。
以前も今も、思っていることは変らない。それが以下のようなことである。
私は決して、『私に出来ないことなど無い』とは思わない。
そして『努力は必ず報われる』とも思わない。
『頑張ったら頑張った数ほど成果が出る』とも思わないし、
『泣いた数だけ幸せになれる』とも思わない。
私が経験して解ったこと。それは、「大半の努力は報われていない」のだ。
私自身、十回努力しても、その中の五回が実ればまだ良い方だった。今もそうだ。
それでは”成功している人”はどうだ?それは、誰も知らないところで何倍もの努力をしているのだ。私の物差しでは測りきれないほどの努力を、成し遂げているのだ。
ある賢人が言った。
『今の私に解っていることは、努力しても報われないこともあるかもしれないが、
努力しなければ絶対に報われない、という事、それだけだ。
今の私には、それだけしか解らない。』
私はこの言葉を待ち受け画面に打ち込んで、就職活動中、何度も眺めていた。
「ならば私は努力をする。そのうちの全てが報われるとは思わないが、やらなければ結果は出ない」
そしてその中で思ったことがある。
私の努力など、誰も知らなくてもいいのだ。他人は私の努力に興味があるのではなく、私の出す結果に興味があるのだから。その中で、「私はこれだけ努力したの!こんな努力をしたのよ!!報われないけど素敵でしょう!」と見せびらかすことが、私には滑稽に見えるのだ。
この回の主人公である千葉さんは、結果的に、努力が報われた形になる。そして彼の努力を認められ、彼はうれし涙を流した。(私も思わず泣いた。)
続き...
vol.11 一人前の働きマン
vol.12 逃げマン
vol.13 面接マン
vol.14 vol.15 こだわりマン
二巻で、恋愛要素がほぼ皆無になっている。実際、松方の彼氏が出てきたのはたったの二コマだ。私は、「恋愛と仕事の間で揺れ動く乙女心」よりも「仕事を通じて強くなる仕事人間としての女」を見る方が好きだ。だから、後者が重点的に書かれているこの二巻が、私好みの色と言っても良い。
【関連情報】
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